第10回。
今回は「相続」についてのお話です。
40代~50代の就職氷河期世代にとって、相続のお話は他人事ではありません。親世代もそろそろ70代~80代になり、それ相応の準備が必要な世代となっているのではないでしょうか?
「うちには相続するような資産はないから。」
という方もいるでしょう。しかし、相続にはプラスの相続もあればマイナスの相続もあるのです。
もし万が一、親御さんに借入金(ローンや借金)があった場合、その負債も相続の対象となることを忘れてはいけません。いざご両親にもしものことがあった時に、それまで知らなかった負債が明らかになり、せっかく残された家や財産が失われてしまうなんてことも…。
言い出しにくいことではありますが、親御さんがお元気なうちに、
- 入っている保険の種類や金額
- (持ち家であれば)自宅の権利関係や登記の内容、住宅ローンの残額
- (賃貸であれば)賃貸契約書や家賃の支払い方法
- 口座のある銀行名と口座番号
- 自動車や株式や債券など資産の有無
- その他ローンや借入金(カードの分割払い含む)の有無
などは確認しておいたほうがよいでしょう。
※ちなみに、住宅ローンの残額については、亡くなった方がローンを組む時に「団体信用生命保険(団信)」に入っていた場合、残額の請求は無くなりますのでご安心を。
なにしろ、ご家族が亡くなった後はただでさえバタバタと忙しいもの。
そんな中で、もし相続放棄をするのであれば死亡を知った翌日から3か月以内に家庭裁判所へ申請が必要ですし、相続するとなれば同じく10か月以内に亡くなった方の住所地を管轄する税務署への相続税の申告および納付が必要になります。
たったの10か月で土地家屋含めすべての財産・負債を把握して、遺産分割について親族内で話をつけて、相続税の計算・申告・納付と…これはなかなかのハードさです。できることから、できる限り進めておくことをお勧めします。もちろん、あらかじめ遺言書を準備できるようであれば書いておいてもらうのもよいでしょう。
それと、これは稀なケースではありますが、親御さんが亡くなった後に相続人の調査をしてみたところ、「いままで知らなかった兄姉がいた」なんてこともありますのでご注意を…。
ーーーーーーーーーー
なお、ここで我々ファイナンシャル・プランナーができるのは相続の『事前準備』についてのみです。
今後発生する相続について、どのような対策があるか。できるだけ相続税を納めずに相続する方法は?など、早め早めのご準備をおすすめします。
実際の相続税の金額計算や遺言書の作成、万が一準備する暇もなく相続が発生した場合の手続きなどについては、ご相談いただくのは弁護士や税理士となりますのでご注意下さい。
また、2024年4月から、相続不動産の相続登記が義務化されております。基本的に相続から3年以内に相続登記しないと、10万円以下の過料が科せられる可能性がありますので、これについての必要な書類の用意や手続きについては司法書士に代行をお願いしてもよいでしょう。
ーーーーーーーーーー
さて、ここまで全10回にわたってご説明してきました『40代、50代非正規のためのお金の知識』、いかがでしたでしょうか?
今まで、こうしたお金についての知識というのは学校で習うこともなく、自分で調べないと知り得ない、また知ったとしてもなかなか詳しくは調べないことばかりではなかったでしょうか?
実際問題として、2024年8月に金融庁などによって立ち上げられた金融経済教育推進機構(J-FLEC)の調査によると、「いままで金融教育を受けたことがある」と回答した方は国民の約7%程度であり、欧米の20%にくらべてかなり低い水準となっております。
こうした状況に対して、このブログが少しでも皆さんの何かしらの助けになっていれば幸いです。
もちろん、よし詳しく、またはご自身の状況を踏まえての相談をしてみたいと思われた場合は、いつでもファイナンシャルプランナーにご相談ください。
みなさんの、よりよい未来のために。
くまねこFP 代表・金子俊彦